発達障害について発達障害について

●「発達障害」とは、先天的な脳の機能的・器質的原因によって引き起こされる、発達に関するさまざまな障害の総称です。具体的には、自閉症やアスペルガー障害などの自閉症スペクトラム、また広い意味では知的障害、AD/HD、LDなども含まれます。(※それぞれの障害については個別に後述)
●症状は年齢と共に刻々と変化するものの、その特性は生涯にわたって持続すると言われています。
●社会適応能力の程度は、成育環境や早期療育の有無などによっても大きな幅が生じます。

①自閉症

●これまでの古典的名称である「自閉症(いわゆるカナー症候群)」は、IQ70未満(知的面の遅れ)を伴うもので、3歳までに「1.言葉の発達の遅れ」「2.社会性の障害」「3パターン化した行動やこだわり」が見られる、という診断基準がありました。
●DSM5(2013年)以降は「自閉症スペクトラム」の中に位置づけられています。(ただしICD10においては現在も「非定型自閉症」の診断名が用いられています)⇒詳細は「自閉症スペクトラム」の項目を。

②アスペルガー障害

●以前は自閉症と共に「広汎性発達障害」の中に分類されていました。
●自閉症の一種ですが、知的な遅れはなく、むしろ特定の分野において知的能力の高い例も見受けられます。
●DSM5(2013年)以降は「自閉症スペクトラム」の中に位置づけられています。(ただしICD10においては現在も「アスペルガー障害」の診断名が用いられています)⇒詳細は「自閉症スペクトラム」の項目を。

③広汎性発達障害(PDD)

●これまで(~2013年)自閉症やアスペルガー障害などを含む発達障害のグループ名称として用いられてきました。(自閉症、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害=「広汎性発達障害」)
●現在では「自閉症スペクトラム」という新しい捉え方に変わりました。⇒詳細は「自閉症スペクトラム」の項目を。

④自閉症スペクトラム(ASD)

●社会性やコミュニケーションに困難を抱える障害です。
●これまでは「自閉症」「アスペルガー」「特定不能の広汎性発達障害」などは別々の障害と捉られてきましたが、それらを《一つの連続した症状》であるとまとめた新しい分類方法です。(2013年DSM5~新設)

自閉症スペクトラムの考え方

レベル1:支援を要する
レベル2:多くの支援を要する
レベル3:きわめて強力な支援を要する

●障害特性

「全く同じ症状をもつ人は一人もいない」と言われるほど、自閉症スペクトラムの症状の現れ方は千差万別、一人一人異なります。

●よく見られる特徴

※実際には、これらの特徴のいくつかが大小さまざまに現れます。

①社会的コミュニケーションや対人問題に関する特徴

・年齢相応の仲間関係を築けない
・「場の空気(雰囲気)」を理解できない
・言ってはいけないことを悪意なく言ってしまう
・言葉を字義通りに受け取ってしまう(「〇〇ある?」と聞かれた時、○○を取ってほしいという意味を理解できず「うん、あるよ」とだけ答えてしまう、など)
・暗黙のルールを理解できない。
・人の表情を読めない
・曖昧な表現の理解が困難(「適当に」「臨機応変に」などの意味が掴めない)

②限定された反復的な様式の行動、興味、活動の特徴

・興味の偏り(たとえば時刻表や鉄道路線を正確に丸暗記している、など)
・変化を嫌い、独自の手順などに固執する(道順など)
・予定外の変更に対応できない、融通がきかない。
・常に同じ、あるいは繰り返し反復的な行動をする(手や指をひらひらさせる、身体を前後に揺する、など)

③感覚の特異性

感覚に対して過敏、もしくは鈍感である(特定の音を嫌う、など)

●人物像

(※生来の性格や成育環境に加えて上記の障害特性がさまざまにミックスされて発現するので、人物像も色々です。)

・軽度では“ちょっと風変わりな人”“個性的な人”という印象を持たれる程度、ただし重度の方は社会生活(仕事や学校生活、家庭生活)そのものに影響を及ぼし、一定の支援を必要とします。
・裏表の使い分けが出来ないので、お世辞などは言えません。
・なぜかいつも周囲から浮いてしまう(溶け込めない)・友人ができない・雑談についていけない
・外見からは伺えない“ガラスのハート” の持ち主であることも。
・『〇〇博士』と呼ばれるほど、特定の分野で驚異的な能力を発揮することも!

●私たちが支援において大切にすること

・「自閉症スペクトラム」と一括りにせず、一人一人の発達凸凹に寄り添った支援を心がけます。
・抽象的な表現は使わず、具体的な言葉でサポートします。
・SSTなどで、問題が生じる場面を具体的に再現設定し、コミュニケーションの練習を『楽しみながら』繰り返し行います。
・過去の傷つき体験で低下した自己肯定感を回復できるような温かい《場》を一緒に作っていきたいです。

●職場ではどんな配慮を要するか?

・指示や注意は具体的にお願いします。
・聴覚過敏の特性がある場合は座席に衝立を設ける、など一工夫を。
・昼休みには一人で過ごせるようなご配慮を。
・「空気の読めなさ」は、(悪気はないので)ある程度、どうかご容赦をm(_ _)m・・・・・・・・・などなど

⑤社会的コミュニケーション障害(SCD)

●自閉症スペクトラムの特性の1つである「興味の偏り・こだわり」「感覚の特異性」は認められないものの、社会的なコミュニケーションにおいては困難が生じるタイプの障害です。(2013年DSM5~新設)⇒自閉症スペクトラムとは別個の障害ではありますが、特性等は「自閉症スペクトラム」の内容に準じます。

⑥注意欠如/多動性障害(AD/HD)

●脳の機能不全による障害と言われており、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状が特徴です。
●DSM5(2013年~)から、ようやく発達障害の一つとして認められました。(それまでは行動障害に分類されていました。)
●多動性については成長するにつれ落ち着いていくことが多いと言われています。
●服薬によるコントロールが可能なケースが多く見られます。
●障害特性「不注意」の特性
・整理整頓が苦手 ・注意散漫でケアレスミスを繰り返す ・集中し続けることが苦手 ・忘れ物が多い
●障害特性「多動性」「衝動性」の特性
・じっとしているのが苦手 ・相手が話し終わる前に話し出す ・順番を待てない ・一方的に喋りすぎる
●人物像
本質的には明るく賑やかで話し好き、一見、社交的な方が多いです。その反面、過去に学校や職場などで「不注意ミスが多すぎる!」「何度言ったらわかるんだ?!」というような強い叱責を受けた経験から〈自分は何をやってもダメかもしれない〉と悩んでいる方も多く見受けられます。
●私たちが支援において大切にしていること
必要に応じて医療機関との連携も視野に入れて支援します。得意な作業を見つけて、自信回復を図ります。衝動性に関してはSSTなどで具体的な場面設定をし、コミュニケーションスキルを向上できるようサポートします。

⑦学習障害(LD)

●全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどのうち、特定のものの習得や使用に著しい困難がある状態。
●医療機関で診断を受けることは稀で、多くは学校などの現場で気付かれます。また自閉症スペクトラムやAD/HDと合併していることが一般的と言われています。
●書字障害(自閉症スペクトラムも併存)の受験生に対する特別措置として、近年では国立大学OA入試において小論文問題のPC利用が認められた(結果、合格)といった事例も報告されています。
●PCや電卓などを利用することによって、学習障害による苦手な部分をカバーすることはある程度可能となります。
(※DSM5では「特異的学習障害」という名称に変更されています)

具体的な各障害について

■発達障害

・自閉症 ・アスペルガー障害 ・広汎性発達障害(PDD) ・自閉症スペクトラム(ASD) ・社会的コミュニケーション障害(SCD) ・注意欠如/多動性障害(AD/HD) ・学習障害(LD)

■軽度知的障害

・精神障害(※)・身体障害(※)
※現在一般的によく使われると思われる障害名称を用いております。

いろんな名称がありすぎて「・・・」

~はじめに~
発達に関する障害について

〈発達障害〉というコトバが広く知られるようになってから、インターネットやTVをはじめ、さまざまな媒体で<発達障害>に関連する情報を見聞きするようになりました。
そんな中で、色々な似たコトバ(障害の名称)が、その都度さまざまな用いられ方をすることに、戸惑われる方も少なくないのではないでしょうか?(私たち、支援者でも、正直、混乱させられる時もあります)

この〈わかりづらさ〉の
原因は・・・?

ご存知の方も多いかと思いますが、精神医学の領域には「ICD」「DSM」という二つの国際的診断基準があります。ICD=世界保健機関WHO発行。日本の厚生労働省はこちらに準じています。精神領域だけではなくあらゆる疾患について網羅されています。DSM=アメリカ精神医学会発行。日本の精神科や心療内科での診断に多く用いられています。

ICDとDMS

さらには、DSMについては、2013年(日本では2014年)にそれまでのDSM4TRに代わり、最新版のDSM5が発行されました。つまり・・・

ICD10とDSM5とDSM4TR

これらの異なる診断基準の考え方や捉え方が、様々なメディアなどでバラバラに用いられていることが混乱の一要因といえるかもしれません。

たとえばICD10に準じる表記はDSM5の観点からは異なる場合がありますし、またDSM4の時代に盛んに用いられた名称・概念がDSM5では修正されている、ということもあるため、どれが正しい、どれが誤り、ということは一概には言えません。

上記のような背景の中で、現在一般的によく耳にする障害について以下に簡単に記します↓↓↓