2019.11.22

外出プログラム ~ 兵庫県立美術館へ行ってきました 2

らく

前回の記事から随分と時間が経ってしまいました。
7月の外出プログラムで、兵庫県立美術館へでかけた際のアンケート結果が非常に興味深かったので、お話させていただきたいと思います。

今回は、4つあった設問の内、Q1とQ2についてお送りしたいと思います。

『Q1.この絵好き!という作品はありましたか?』
『Q2.なんじゃこりゃ?変な絵!という作品はありましたか?』

相反するふたつの質問のようですが、「好きの反対は嫌い」あるいは「嫌いの反対は好き」とはちょっと考えにくいように思います。あるものに対して好意を抱くのも、不快感や違和感を覚えるのも、結局のところ、「何か自分の心に触れて、突き動かすものがある」という点では根底にあるものは同じではないでしょうか。そのような観点で、この2つの設問に寄せられた回答をまとめていきたいと思います。

作品別で見ていくと、不思議なことに、あまり突出した作品はなく、メンバーたちの好みはそれぞれに分かれたという感じでした。しかし、これを作品別ではなく、作家別で見てみると…

ご覧の通り、Q1・Q2共にシャガールが1位に入っています。これはまさに、冒頭で述べたとおりで、快不快に関わらず、メンバーたちの心に強いインパクトを与える作品が多かったのでしょう。Q1.に対しては、『色彩が鮮やか、美しい』、そしてQ2.についてはやはり『ホラー、こわい』という意見が多く寄せられました。

ここまでお話しすると、シャガールの独壇場のような感じがしますが、ちょっとここで公正な判断をすべく、作品の展示数に注目したいと思います。
この展示会でのシャガールの展示作品数は、なんと他の作家たちよりも格段に多い10点。この展示会の企画をされた方がシャガール贔屓だったのでしょうか。展示会のテーマが印象派だけではなく、その後に続く絵画も取り上げているとはいうものの、まるでエコール・ド・パリのシャガールが大本命で、印象派の作品群は彼を際立たせるための “前振り” に過ぎなかったのではないか…?などと邪推したくもなるような展示数の違いです。その点を考慮すると、他のどの作家よりもシャガールの作品が多く回答に上ったのは、なるほど納得のいく結果かもしれません(ちなみに、主だった印象派の作家で、作品展示数がシャガールに次いで多かったのは、ルノワール 7点、シスレーとピサロが6点、モネ 5点でした)。

と、そう考えてみると、ひとり気になる作家がいます。Q2.の2位に入っている、ジョルジュ・ブラックです。
このジョルジュ・ブラック氏、出展されている作品はたったの1点、『洋梨のある静物(テーブル)』という作品です(著作権上、画像を掲載することができませんので、リンク先をご参照ください)。ちょっと、Q2.の回答結果を作家別・作品別で見てみることにしましょう。

シャガールの絵を奇妙に感じた人は6名もいたのですが、では、どの作品を?となるとそれぞれが違う作品を挙げています。対して、ジョルジュ・ブラックの『洋梨のある静物(テーブル)』

-「どこが洋梨?」
-「洋梨もテーブルもわからない」
-「想像力が豊か過ぎる」

表題から想像されるものが全く描かれていない!という “裏切られた” 感でもあるのでしょうか。見事にメンバーたちの「変!」が集中した結果となりました。
ジョルジュ・ブラック『洋梨のある静物(テーブル)』は、あとの Q3、Q4 の回答にも出てきます。さらに面白いことに、「設問に関わらず、よく名前が出てきた作品」で集計をとってみると、やはりこの『洋梨のある静物(テーブル)』が見事に首位の座に輝いていました。

他の解答を見ていても、メンバーたちの個性がよく表れていました。また、同じ作品に対する意見でも、人が違えばまったく見方も違うということもよく現れていて大変興味深く感じられました。
例えば、カンディンスキーの作品『結びつける緑』『適度なヴァリエーション』などを観て、理系にも文系にも強いあるメンバーは「幾何学的なところが魅力的。観ていてワクワクする」と言い、10代のメンバーは「ポップアートみたいでかわいい」という感想を挙げています。
イラストを描くのが上手なメンバーたちの感想は、やはりまた他のメンバーたちとは観点が違いました。

「ありえない色同士が調和している」
(Q2.『シウラナ村』ミロ に対して)
「描写が非常に細かくて、遠くから見ても吸い込まれそうな感覚がして新鮮だった」
(Q1.『睡蓮 モネ、『モレのポプラ並木』シスレー等 に対して)
「建物が多くて、色と構図がかっこいい」
(Q1.『ルーアンのエピスリー通り、朝、雨模様』 ピサロ、
『モンマルトルのミュレ通り』 ユトリロ に対して)

他にユニークな感想もありました。

「痩せたアル・カポネみたいで面白い」
(Q1.『パイプを持つ男』シャガール)
「薬(ヤク)におぼれたヴァイオリン演奏者」
(Q2.『逆さ世界のヴァイオリン弾き』 シャガール)
「生首かと思った」
(Q2.『ジョーの肖像、美しいアイルランド女性』 クールベ)

などなど…。

もともと絵画に親しんでいるメンバーも、特にそうでないメンバーも、それぞれに鑑賞を楽しんだようでした。

※続きの記事※
外出プログラム ~ 兵庫県立美術館へ行ってきました 3

※絵画のリンク元は、すべて公益財団法人 吉野石膏美術振興財団(吉野石膏コレクション)です(一部メンテナンス中のようです)。

 

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